猫エイズキャリア(陽性)の保護猫。迎えるとき気を付けることは?

猫の里親会・譲渡会には、猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症 FIV)陽性のコもいます。当サイトスタッフも預かりボランティアでお世話していました。猫エイズの猫を迎えるとき、何に気を付ければよいでしょうか?

猫エイズは人に感染しない

エイズというと人間の場合は「免疫機能が壊され、死に至る病」「性感染症」…など恐ろしいイメージがつきまといます。確かに、「感染する」「免疫機能の破壊」といった特徴は猫エイズも同じ。

ただし感染はあくまで同種間のみ。人のエイズウイルスHIV(ヒト免疫不全ウイルス)が猫に感染することはなく、猫のエイズウイルスFIV(ネコ免疫不全ウイルス)が人に感染することもありません。

猫エイズキャリアの猫
先日預かっていたFIV陽性のコ。オモチャで遊ぶのが大好き!

キャリアのまま発症しない猫も多い

たとえ猫エイズ陽性でも、発症しないまま寿命を迎える猫はたくさんいます。猫エイズの発症は、免疫力の低下が引き金となります。完全室内飼いの猫であれば外猫を媒介とする感染症にかからないため、猫エイズ発症率は低くなります。

ただし、何かをきっかけに、完全室内飼いの猫でも猫エイズを発症することがあります。すると、短期間で重篤な症状に進行してしまいます。

※口内炎、歯周病、歯肉炎などの口腔環境の悪化が一番多いと言われています

猫エイズウイルスへの感染(急性期)から発症(エイズ期)までは以下4期の過程があります。

1 急性期数週間~数か月FIVウイルスが体内に入り、軽い発熱や下痢、リンパ節の腫れが続く。ほとんど症状がでない猫もいる。
2 無症状キャリア期1~10年急性期の症状が治まり普通に生活できる。
3 エイズ関連症候群(ARC)期2~4か月急性期のように、リンパ節が腫れるなどの発症の兆候が出る。
4 エイズ期1~3か月免疫機能が低下し始め、口内炎、鼻炎、結膜炎、皮膚炎などが現れる。とくに口内炎の症状が顕著。

いったんARC期に入ってしまうと、すぐにエイズ期へと移行して日和見感染症や腫瘍などを発症し、まもなく死に至るといわれています。ARC期・エイズ期の治療は、さまざまな症状への対処療法となります。

残念ながら、猫エイズの発症を抑える薬はまだありません。その一方、キャリアの猫を迎えたとしても服薬の手間やコストはかかりません。

おもな感染経路はケンカ

なわばり争いのケンカが猫エイズのおもな感染経路です。FIVウイルスを含む唾液や血液が傷口から体内に入ることで感染します。そのため未去勢のオス猫がもっとも多いと言われています。

野良猫のオス
野良で未去勢のオスは、猫エイズの可能性が高い。

FIVウイルスに感染した猫は、唾液や血液などの体液中にウイルスを保持しています。前述の1~4期のどの猫であっても、噛むことで他の猫に感染させる可能性があります。噛むこと以外では、交尾・妊娠・出産でも感染リスクがあります。

猫エイズキャリアの猫を迎えるとき、気を付けること

前述したように、猫エイズキャリアの猫は「完全室内飼い」が基本です。

キャリア同志を飼育する場合は特に注意することはありません。キャリアの猫とノンキャリアの猫を飼う場合は少し注意が必要です。咬み合うような激しいケンカする猫同士は絶対にNGです。

とはいえ、キャリアの猫とノンキャリアの猫をいっしょに飼っていたら感染してしまった…という話は聞いたことがありません。猫エイズウイルスは猫の体外では数分で感染力を失うため、食器の共有や毛づくろいでは感染しない、といわれています。

ノンキャリアの猫への感染がどうしても心配な場合は、猫エイズのワクチン接種で予防することも可能です。

猫のコアワクチン、ノンコアワクチンとは?

野良猫の平均寿命は3~5歳。それに対して家猫の平均寿命は約15歳です。この大きな差は、環境の違いと感染症にかかるかかからないか…ワクチン接種の有無が大きく関係してい…

お口の状態、ニオイに注意しよう!

キャリアの猫はお口の状態が悪く、歯肉炎や口内炎、歯周病にかかっている場合が多く見られます。うちで預かっていたキャリアの猫も、お口のニオイが少し気になりました。そこで、あくびをしたときにのぞき込んだら、上顎奥歯の歯茎に赤みを見つけました。

あくびをする猫 猫エイズ陽性
あくびをしたときにお口の中をチェック!

その後、デンタルバイオ、デンタルちゅ~る、リデンタウォータープラスなどを代わる代わる使ううちお口のニオイはなくなり、歯茎の赤みも和らぎました。猫エイズキャリアのコには口腔環境が悪化しないように、お口チェック&ケアを心がけてください。

猫エイズのブログをチェック!

まだまだ敬遠されがちな猫エイズキャリアの猫。実際、うちで預かった猫も里親さんが見つかるまで1年弱かかりました。ですが理解ある里親さんに巡り合い(しかも猫の飼育は初めての方)、とても大切にされています。

キャリアの猫を迎えるかどうか迷っている人は、以下ブログなども参考にしてみてください。

猫エイズのお家…大阪で猫の保護・TNR活動する方のブログ。猫エイズは怖いものではないことや、キャリア猫に関して悩んでいる人への情報を発信。

猫エイズキャリア|NPOあしながねこ…神奈川県平塚市を拠点に猫のTNR活動をしているNPO団体のブログ記事。いまの猫エイズ事情をリアルに伝えています。

もし、あなたが気になる猫が猫エイズキャリアだったら…?ほんの少しだけ覚悟をして迎えてあげましょう!

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