映画『チョコリエッタ』:最愛の母と犬を亡くし、進路調査書に「犬になりたい」と書いた女のコのお話
映画に犬や猫が出てくると、思わず「ニヤリ」としてしまう動物好きのみなさん!
「これ演技なの?」と感心したり、自分の経験と重なって涙が止まらなくなることはありませんか?
今後編集部では、犬や猫がいいスパイスとなっている映画を取り上げ、紹介していきます。
第一弾は、2015年1月17日から新宿武蔵野館で公開されている『チョコリエッタ』。
主人公は犬を亡くしたばかりの1人の女子高校生。その青春とともに犬との関係が繊細に描かれた作品です。
出演しているワンコは10歳のラブラドール・レトリーバーです。
犬との撮影エピソードもお聞きすることができましたよ!
映画「チョコリエッタ」のあらすじ
主人公は、小さな頃に交通事故で母親を亡くし、そして、半年前に愛犬ジュリエッタを亡くした16歳の女の子、知世子(ちよこ)。かつて母親は、知世子を犬のジュリエッタと同じように「チョコリエッタ」と呼んでいた。
ジュリエッタが死んで半年。ある日、知世子は髪をほぼ坊主というくらい短くして登校する。進路調査書には「犬になりたい」と書いた。母親に加え、ジュリエッタがいなくなったこの世界は、知世子にとって「クソッタレ」なのだった。
映画研究部の部員である知世子は、ふと、以前、学校で上映したフェリーニの『道』が観たくなる。DVDの行方を聞くと、変わり者のOB、正宗先輩の持ち物で今は彼の部屋にあるという。先輩を訪ね、一緒に『道』を見ていると、知世子は不思議な感覚に襲われた。
以後、距離を縮めた2人は、夏休みに撮影旅行に出かける。それはまるで、旅芸人ザンパノとジェルソミーナのようで…。
瑞々しい演技で魅了する森川葵と菅田将暉に注目!
原作は、透明感のある文体と優しさ溢れる視点で人間模様を描く実力派女性作家、大島真寿美の「チョコリエッタ」(2003/角川文庫)。
監督は、『冬の河童』『火星のカノン』『せかいのおわりworld's end / girl friend 』などでかねてから国際的に評価の高い風間志織。本作は、フェデリコ・フェリーニの『道』をきっかけに映画の道へと進んだ風間監督のフェリーニへのオマージュとなっている。
主演は、近年、話題のティーン映画に立て続けに出演・主演し、天才肌の演技派として大きな期待を寄せられている10代女優の注目株、森川葵。自ら坊主にして過激で透明感のある知世子を見事、演じきっている。
正宗先輩役には「仮面ライダーW」でデビューした菅田将暉。自分への苛立ちを抱えた個性的なキャラクターを演じ、知世子との不思議な友情を表現している。
知世子の愛犬ジュリエッタは、10歳のラブラドール・レトリーバー、ジョンヌが演じた。
キャストのプロフィール
森川 葵(もりかわ あおい)
1995年6月17日生まれ、愛知県出身。2010年、女性ファッション雑誌「Seventeen」の専属モデルオーディションでグランプリに選ばれ、モデルとして芸能界入りし、2012年女優デビュー。主な出演作品は、「スプラウト」(2012/ドラマ)、「ホリック xxxHOLiC(2013/ドラマ)、「35歳の高校生」(2013/ドラマ)、『渇き』(2014/映画)、『劇場版 零~ゼロ~』(2014/映画)、「ごめんね青春!」(2014/ドラマ)ほか。
菅田将暉(すだ まさき)
1993年2月21日生まれ、大阪府出身。2009年にシリーズ史上最年少ライダーとして「仮面ライダーW」でデビューを飾り、一躍注目を集める。主演した映画『共喰い』(2013)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その他の主な出演作品は、「泣くな、はらちゃん」(2013/ドラマ)、「35歳の高校生」(2013/ドラマ)、「ごちそうさん」(2014/ドラマ)、『そこのみにて光輝く』(2014/映画)、『海月姫』(2014/映画)、ほか。
ジョンヌ
2004年2月26日生まれのラブラドール・レトリーバー(♀)。誰にでも尻尾を振って近づき、愛想が良く従順な性格。チャームポイントは大きくてクリク リな目。うれしいことがあると、尻尾をグルグル回転させて喜ぶ。パンが大好物。ボール遊びと泳ぐことも大好き。嫌いなことは独りぼっち。ウイークポイ ントは食いしん坊で太りやすいこと。
女性監督が描く、自分だけの世界とリアルが入り混じる青春
思春期の危うさや儚さ、現実社会に対する不安や怒り、そして自分への苛立ち…。本作は、誰もが通る大人への階段を心に痛みを抱えた少女の視点で描いています。
感性豊かな2人の主人公を演じた森川葵と菅田将暉。2人の瑞々しい演技にグイグイ引き込まれていく作品です。
また、映画『道』を彷彿とする夢と現実が入り混じる知世子の「自分だけの世界」がユニークで、映画のスパイスになっています。
その一方、「リアル」への観点もポイント。主人公たちは何かをきっかけに簡単に再生されるわけではありません。また、犬との関係や暮らしのリアルさにもグッときてしまいます。
この「自分だけの世界」と「リアル」の絶妙な配分に風間監督のセンスが発揮されています。
ジュリエッタ役のワンコはおデブな劣等生、ジョンヌ
じつは最初、ジュリエッタ役はジョンヌではなく他の犬に決まっていたそうです。そのコはゴールデン・レトリーバーで、若くてスタイルもよく、お利口なコ。いわばスタッフが選んだ優等生でした。
一方、10歳のジョンヌはおデブで息は荒いし、足音もうるさい。おまけに長い撮影にも飽きてしまうといったやや劣等生。
ところが風間監督は、ジョンヌのクリッとした目と情けない表情がジュリエッタにピッタリだと思い、ジョンヌに決めたそうです。
撮影から半年。完成した作品を見たスタッフは、ジョンヌのおデブな体とクリッとした目、情けない表情がとても効果的で、役にピッタリはまっていると感じました。
「立派に役を演じていたジョンヌには、きっと監督の思いが伝わっていたのだ」と、みなさんが思ったそうです。
監督:風間志織 原作:大島真寿美(「チョコリエッタ」角川文庫) 脚本:風間志織 及川章太郎 プロデューサー:伊藤直克 横濱豊行 撮 影:石井勲 照明:大坂章夫 録音:湯脇房雄 美術:丸尾知行 音楽:鈴木治行 スクリプター:田口良子 VFXコンポジター:大野俊太郎 助監督:石井 晋一
出演:森川葵 菅田将暉 市川実和子 村上淳 須藤温子 岡山天音 三浦透子 地曵豪 渋川清彦 クノ真季子 梅垣日向子 宮川一郎太 中村敦夫 他
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