犬のカーミング・シグナルからストレスの原因を見つけよう
犬の意味不明な行動はストレスが原因?
犬が音を怖がって困るという話をよく聞きます。掃除機の音、ドライヤーの音、自動車の音、雷の音などを聞いただけでパニックになって、逃げ出そうとしたり、安全な場所を探して隠れようとする犬は少なくありません。
正常な回避行動として、自分が恐ろしいと感じるものや、危険なものから自分自身を守ろうとする場合は問題ありませんが、うまく適応できない恐怖や不安に対してはパニックとなってしまうのです。この恐怖や不安が原因で、落ちつきなくウロウロと歩いたり、毛をむしったり、体を過度に舐めるなどの行動が日常的に出てくると問題になります。
あなたの犬は、目的や意味のない行動を繰り返していませんか?慢性的なストレスに陥っていないでしょうか?精神的ストレスや不安は問題行動や病気の原因になりかねないので注意が必要です。ただし、その原因が複合していることもあるので、よく犬を観察して、その原因を特定することを日頃から心掛けるようにしておくと良いでしょう。
犬のカーミング・シグナルとは?
まずは犬にとっての不安は何かを明確に探し当てることから始めましょう。恐怖や恐れがある場合の前兆のサイン(不安行動)は、以下のようなものがあります。
・体を舐める
・唇を舐める
・あくびをする
・地面の臭いをかぐ
・飼い主と視線を合わせることを避ける
・頭を横に向けて他の犬から離れようとする
・体の側面を他のイヌに向けて頭を向けないようにする
・唇を水平にして引き上げ、前歯を見せる(威嚇のときに歯をむき出しにするものとは異なります)
・仰向けに寝転がって鼠径部(“そけいぶ”、下腹部のこと)を見せる
以上の行動は、“カーミング・シグナル”といわれるもので、不安を取り除いたり自分を落ち着かせたりするための行動であるとともに、他の固体とのコミュニケーションにも有効な行動であると解釈されています。“カーミング・シグナル”の効果について、科学的な証明はされていませんが、これらの行動を見つけたら「何か不安なことが愛犬にあるのかもしれない」と疑い、その原因を探ってみてください。
弱い刺激から徐々に慣らしていく
例えば掃除機の音など、自分に直接的なダメージを与えない刺激に対しては、何回もその音にさらされ経験することで、その刺激に対する反応が減少していきます。この過程のことを般化(慣化、訓化)といいます。簡単にいえば、「刺激に慣れていくこと=反応が弱まる」ということです。これとは逆に、強く激しい刺激にさらされることで反応が増大することを感作(鋭敏化)といいます。これは「刺激に対して鋭敏となること=反応が強まる」ということです。
強烈な刺激はトラウマとなり、後に弱い刺激に対しても鋭敏に反応するようになってしまいます。例えば、強くて大きい地震を経験すると、今度は小さな地震でも大きく反応して怖がってしまうような場合のことです。
音を怖がる場合にはその音で徐々に慣らしていくことになりますが、慣らす過程においてトラウマになるような大きなボリュームや長時間での音の刺激は与えない事が重要となります。くどいようですが、弱い刺激から徐々に慣らしていくことがポイントです。また、このように刺激に対しての反応をなくしていくことを“脱感作”といいます。
ご褒美で、嫌いなことを好きなことに関連づける
例えば、「掃除機の音に鳴らす」などのしつけでは、犬が怖がる音をご褒美などで好きになるようにしていき、その音を怖がらないようになることを目標とします。まずは愛犬が怖がらない程度の小さいボリュームで、時間も短くして聞かせることから始めます。愛犬が許容できる刺激音であることが条件です。ここでのポイントは、“怖い音=ご褒美(オヤツ)”と愛犬に連想させることです。このような方法を“拮抗条件付け”といいます。嫌いなことを好きなことに関連させ、最後は嫌いなものを好きなものにしてしまおうという方法です。
怖がる音に対しては、前述の“脱感作”と“拮抗条件付け”を併用して対応するのが基本となります。この方法を用いれば、音だけでなく、他犬や他人への怖がりなども修正することができるでしょう。
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