犬の咬傷事故。飼い主が負う損害賠償責任とは?

咬傷事故

犬を外で運動させるときは必ずリードをつける

お散歩は犬と飼い主の楽しいひとときです。しかし、さまざまな刺激が満ち溢れています。屋外にはいろいろな犬や人がいて、道には自動車や自転車が走っています。何かの拍子に犬がパニックを起こすと、他の人や犬などに傷つけてしまう可能性があります。
動物愛護法管理法の基準では、犬を屋外で運動させるときは、リードを付けて犬を制御できる者が行うよう義務づけています。ノーリードでの犬の散歩は大変危険です。絶対にやめるようにしましょう。
ただし、リードを付けていても、他の人や犬を咬んで傷つけたりしないよう注意が必要です。 もし、散歩中に愛犬が他の人や犬に咬みついて怪我をさせた場合、飼い主はどのような責任を負うのでしょうか?

人への咬傷事故で飼い主が負う民事上の損害賠償責任

民法718条では「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。」 と規定しています。
つまり、犬の飼い主や飼い主から犬を預かっている者(これらを占有者といいます)が、犬の散歩中に他人や他人の所有物である犬を傷つけた場合は、損害賠償責任を負うということです。 ただし、犬の占有者が相当な注意を払っていた場合は、責任を負わないことになっていますが、これまでの裁判例で、犬の占有者が「相当な注意を払っていた」と認められて免責された事例はほとんどありません。犬の占有者には重い責任が課せられていると考えておいて下さい。
このようなことから、犬を散歩に連れて行く際には、他の人や犬を咬んで傷つけないよう万全な手段をとることが必要となります。
犬は飼い主に対しては温順ですが、未知の人や犬に対しては必ずしもそうではありません。また、街中の音やその他の刺激により興奮することがあります。ですから、犬を散歩させるときは、飼い主の体力や技術、犬の種類、癖などを考慮して、万が一、犬が吠えかかったり興奮したときも十分コントロールできるよう、散歩の場所や時間、犬を繋ぐ方法、頭数などについて注意を払わなくてはならないのです。
このような注意を怠り、犬が他人を咬んで傷つけた場合、
・ 治療費
・ 通院交通費
・ 休業損害
・ 慰謝料
などについて賠償する責任を負うことになります。 賠償金額は高額になることもあり、約2,000万円の賠償を命じた裁判例もあります

他の犬を傷つけた場合、ノーリードで他人に咬みついた場合は?

他人の所有物である犬を傷つけた場合も、同様に損害賠償責任を負います。 その犬の財産価値だけでなく飼い主に対する慰謝料についても賠償責任を負う場合があります。裁判例では、飼い主に対して40万円の慰謝料の賠償を命じた事例があります。
このような民事上の責任だけでなく、犬をノーリードで公園で運動させて、他人に咬みついて怪我させたような悪質な場合には、過失傷害罪として30万円以下の罰金という刑事上の責任も負うことがあります。くれぐれもご注意ください。

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