犬がご主人に代わってお伊勢参り。「おかげ犬」から垣間見える人と犬のほのぼの関係
先日、伊勢神宮にお参りしてきた友人から「おかげ犬サブレ」をいただきました!
ご主人に代わってお伊勢参りをした犬といわれる「おかげ犬」。以前から気になっていたので調べてみました。
江戸から伊勢まで片道15日!病弱なご主人に代わりに
伊勢神宮といえば日本にあるすべての神社の総本社。"日本人の心のふるさと"とされ、古くから「一生に一度はお伊勢参り」と言われてきました。特に江戸時代はブームと言えるような状況で、「おかげ参り」と称され、多いときは日本人の6人に1人がお参りしたそうです。
もちろん当時は飛行機も電車も車もないため、誰もが歩いて参拝しました。江戸からは片道15日間、大阪から片道5日間、名古屋から片道3日間もかかったといわれます。
しかし、足腰が悪い人や病弱な人は伊勢までは行けません。そんなご主人の代わりにおかげ参りをしたとされるのが「おかげ犬」です。
おかげ参りをする知り合いに犬を連れて行ってもらったり、犬だけを旅に出すこともあったようです。
道中は旅人や街道の方々のお世話に
その場合、どのようにしたのかというと、まずは「おかげ犬」と分かるようにしめ縄を首に巻きます。
そして、犬の首にお札代や餌代となるお金と「お伊勢参りに行くこと」「飼い主の住所と名前」を書いた紙などを括り付けておくのです。こうすると旅人たちが引き継ぎながら犬を伊勢まで連れて行ってくれ、道中、街道の宿屋や茶屋の方々が食事を与えるなどのお世話をしてくれました。お伊勢に着いた犬はお札を買い、無事にご主人のもとに帰ったのです。
道中は、犬に食事を与えても餌代をいただかず、反対に「立派な犬だ」とお金を足す人もいたそうです。おかげ参りをする犬からお金を盗むような不届き者もいなかったとのこと。それだけ当時の人は伊勢神宮への信仰が強かったのですね。日本人の信仰心とともに、犬とのほのぼのとした関係も垣間見えます。
徳島県の「おさん」や福島県の「シロ」など、「おかげ犬」の話が残っています。
■三重県立博物館が所蔵する「御陰参宮文政神異記」(1830年)
当時のお伊勢参りブームの規模や様子、阿波国徳島(徳島県)の「おさん」という犬が挿絵とともに記されていることが解説されています。
■まぜっせKORIYAMA「須賀川市十念寺 忠犬のお伊勢参り」
福島県須賀川には主人に代わって伊勢参りをしたシロの話が言い伝えられています。
■Travel.jp「犬好き必見!福島県須賀川から伊勢へ行った忠犬「シロ」の犬塚」
Travel.jpのナビゲーターが十念寺にあるシロの犬塚を訪ねたレポート記事が掲載されています。
■ウィキペディア「お蔭参り」
お蔭参りの解説と、歌川広重「伊勢参宮 宮川の渡し」が掲載。以下のように、しめ縄をつけた白い犬が描かれています。
最近は「おかげ犬」の話を聞いて、お伊勢参りをする人もいるのだとか。「おかげ犬」グッズがかわいいと評判です!
■伊勢内宮前 おかげ横丁
お伊勢参りで賑わった江戸末期から明治初期の門前町の町並みを再現した観光施設。おかげ犬グッズの販売も。
おかげ犬に関する書籍はこちら
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