猫の“痛み”に気付いて。猫の表情から痛みを検知するAI「CPD」とは?

猫の痛み

私たち生物にとって「痛み」は、病気やケガのシグナルとして重要な情報です。みなさんは猫の痛みに気付いてあげているでしょうか?

猫は痛みを隠す動物

猫は「痛み」を隠す傾向があります。痛みにじっと耐えるので犬に比べて飼い主さんが気付けないことが多いといわれます。これは、かつて群れで暮らしていた犬と単独行動していた猫の違いといえそうです。

そんな猫の痛みに気付いてあげるにはどうしたらいいでしょうか?

健康診断などで病気の早期発見に気を付ける…のは飼い主として当然のこと。これに加え、「いつもとようすが違う!?」という飼い主さんの気付きが非常に重要になってきます。

いつもと違うところに籠っていたら注意

猫の痛みは表情や行動に現れる

猫の痛みは表情や姿勢に現れます。獣医師などは痛みの有無や度合いを、痛みのサインやペインスケールなど、いくつかの痛みの評価方法によって判断しています。しかし、獣医師、動物病院スタッフ、飼い主の観察能力や熟練度によって評価に差が生じてしまうのが実情です。

猫における痛みのサイン(急性痛)

  1. 横になり、緊張またはじっとしている
  2. 背中を丸めてケージなどに背をくっつけて静かにしている
  3. 頭を下げて耳を垂らし、2つの目がV字になるくらい吊り上がっている
  4. 特定の部位を触られるとうなる、引っ掻く、かみつくなど
愛玩動物看護師ポータルより

猫の痛み
猫のグリマス(しかめっ面)・スケール トレーニングシート

動物のいたみ研究会とCarelogyが共同開発

そんななか、動物の“いたみ”に関する研究団体「動物のいたみ研究会※1は、痛みを抱えている猫は表情に変化が生じることに着目。株式会社Carelogy※2と共同で、猫が痛みを抱えている顔をしているか否かを判別できるツールを開発しました。

※1 動物のいたみ研究会……2003年に公益財団法人動物臨床医学研究所(理事長:山根義久)の傘下に発足した研究団体。「動物も痛みを感じており、それに気づいて解放してあげること」を重大な使命として、動物の「いたみ」に関する様々な普及および啓発活動を行っている。

※2 株式会社Carelogy……「医療の民主化(=だれでも、どこでも、簡単に高度医療が享受できる世界)」を実現するAIカンパニー。事業内容は診療支援AIの企画開発、およびDX推進コンサルティング。

そして2023年5月にリリースされたのが、Cat Pain Detctor:キャットペインディテクター(CPD)です。

猫の痛み CPD

使い方は簡単。猫の顔の写真を撮影するか過去の写真から選択してアップロード。すると、数秒以内に「痛みの表情であるか否か」をCPDのAIが判別します。ご利用は以下CPDサイトから。アプリのDLもCPDサイトからできます。

“CPD”猫の痛み検知AI

このように無料かつシンプルなサービスとなっているCPD。これには「多くの飼い主さんに日常的に使ってもらう」「飼い主に猫が痛みを抱えている可能性に気づいてもらい、動物病院に行くきっかけとして活用してもらう」という両社の思いが反映されています。

猫の飼い主としてはありがたい限り。私もいま預かっている保護猫の写真でやってみました!若くて元気なのでやはり「痛みの表情はなし」。ホッ。

世界48か国の愛猫家10万人が利用

日本語版と英語版でリリースされたCPDは、7月時点で世界45か国のユーザーに拡大。そのときの国別ユーザーランキングがこちら。英語版のおかげで世界中の愛猫家に広がりを見せています。

猫の痛み ユーザーの国籍

その後、フランス語と中国語版、ポルトガル語版もリリース。9月にはなんと、ユーザー数10万人を突破!世界48か国で利用されています。

ユーザーデータで精度が95%にアップ!

CPDリリース時の精度は90%。稀に痛み表情がない画像でも「痛み表情:あり」と判定されてしまうことが発生していました。

しかし10月にアップデートされたAIでは、ユーザーの判定データをAIに学習させることで過剰な判定が激減。判定精度95%以上となり、より信頼性の高いAIとなりました。と同時にAIモデルの40%軽量化。これにより判定速度の高速化も実現したそうです。

キャンペーンでさらに精度アップ

CPDではSNSを中心に「#cpdで猫助け」キャンペーンを実施中。参加方法は「#cpdで猫助け」のハッシュタグを添えてSNSで猫の写真を投稿するだけ!その目的は収集したデータをAIに学習させ、最終的には臨床レベルまで向上させることとなります。

キャンペーンを担当する尾関さんによると、
「日々、ユーザーのみなさまから、SNSやアンケートなどを通して『応援してるよ』『開発がんばってね』という声をいただき、いつも励みにしております。『#cpdで猫助け』キャンペーンはそれらを力に変えます。AI精度を高めていくことで、みなさまに還元してまいります」とのこと。みなさんもぜひ、使ってみてご協力を。

尾関大地
株式会社Carelogy 取締役CFO 尾関大地さん

期待が高まる新機能

CPDはユーザーの要望に応えるため、以下の機能を搭載した新「CPD」の開発を進めています。

  • 痛みの程度まで判定する高精度AI
  • 複数頭の登録・複数枚のカレンダー記録
  • 複数枚の同時アップロード・判定 etc...

リリースは2023年中の予定だとか。引き続き当サイトでもCPDに注目していきます!

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