犬の痛みに気付いて。急性痛はペインスケールを参考に
言葉を持たない犬は自分の痛みを飼い主に伝えられません。私たち飼い主は何を基準に犬の痛みを知ることができるでしょうか?
動物のいたみ研究会の基準
私たち飼い主が犬や猫の痛みを的確にとらえることは非常に困難です。
獣医学の分野でも簡単とは言えないようです。動物のいたみ研究会(動物臨床医学研究所)※によると、現状としてさまざまな痛みの評価方法があり、どれもその判断は難しい…とのこと。
※動物のいたみ研究会……2003年動物臨床医療研究会内に発足。その目的は産業界と研究会が一体となって学術研究を進め、その成果を基に「いたみ」に対する理解と獣医学的対応の普及・啓発を図ること。協賛企業により運営されている。
動物のいたみ研究会では、犬の急性痛と慢性痛の評価基準となるペインスケールなどを発表しています。あらゆる動物の心身へ大きなストレスをもたらす“痛み”。いち早く愛犬の痛みに気付いてあげるには、これらペインスケールなどを用いた痛みの判断(評価)を知っておくべきでしょう。
犬の急性痛とは?
動物のいたみ研究会が発表したWSAVA 疼痛の判別、診断と治療のガイドライン によると、犬の急性痛の原因は、以下とされています。
- 外傷や外科手術
- 内科的問題
- 感染
- 炎症性疾患
外傷、術後といった明らかな痛みの原因以外にも、2~4の内科的な感染症や疾患による原因も犬の急性痛の原因となります。
犬の急性痛の重篤度は非常に軽度から非常に重度まで、持続時間は数時間~数日、とのこと。これらは「鎮痛薬を用いることで効果的に管理できる」とされています。
ですから犬に痛みの異変を確認した際は、動物病院で注射や薬などで痛みを取り除く処置してもらいます。
飼い主さんが犬の痛みに気付くには、次の「犬のペインスケール」が役に立ちます。
犬の急性痛ペインスケール
犬の急性痛ペインスケールは犬に見られる変化行動で痛みの度合いを判断するものです。
レベル0は「痛みの兆候は見られない」。痛みがある状態はレベル1~4まで4段階です。飼い主さんはレベル1~4までの犬の行動変化に注視してください。レベル1以上の犬の行動変化を確認した場合は、動物病院へ連れていきましょう。
犬の急性痛ペインスケール:レベル1
レベル1では、以下13の犬の行動変化が示されています。油断すると見逃しがちな行動で、“痛みがある状態”に見えないかもしれません。しかし痛みはあります。十分にご注意ください。
- ケージから出ようとしない
- 逃げる
- 尾の振り方が弱々しい、振らない
- 人が近づくと吠える
- 反応が少ない
- 落ち着かない、そわそわ
- 寝てはいないが目を閉じている
- 元気がない
- 動きが緩慢
- 尾が垂れている
- 唇を舐める
- 術部を気にする、舐める、咬む
- ケージの扉に背を向けている
犬の急性痛ペインスケール:レベル2
レベル2では、以下9の行動変化が示されています。飼い主さんが気付きやすい異変なので見て見ぬふりはNG。気付いたら原因を探り、動物病院へ。
- 痛いところをかばう
- 第3眼瞼の突出
- アイコンタクトの消失
- 自分からは動かない(動くよう促すと動く)
- 食欲低下
- じっとしている(動くよう促しても動かない)
- 術部に触られるのを嫌がる
- 耳が垂れたり、平たくなっている
- 立ったり座ったり
犬の急性痛ペインスケール:レベル3
レベル2では、以下13つの行動変化が示されています。明らかに犬にとってつらそうな異変です。直ちに動物病院へ連れて行きましょう。
- 背中を丸めている
- 心拍数増加
- 攻撃的になる
- 呼吸が速い
- 間欠的に唸る
- 間欠的に鳴く
- 体が震えている
- 額にしわを寄せた表情
- 体に触れたり、動かそうとしたりすると怒る
- 流涎
- 横臥位にならない
- 過敏
- 術部を触ると怒る
犬の急性痛ペインスケール:レベル4
レベル4では、以下8つの行動変化が示されています。誰が見ても急を要する異変です。何よりも優先して犬を動物病院へ。
- 持続的になきわめく
- 全身の強直
- 間欠的になきわめく
- 持続的に鳴く
- 持続的に唸る
- 食欲は廃絶
- 散瞳
- 眠れない
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