猫の遺骨はどうする?ネコリパ不動産発起人が出した「ガーデン散骨+保護動物支援」の答え
亡くなった犬や猫の遺骨。みなさんはどうしていますか?
人と違って宗教を気にしてなくていいペット。多くの方が「離れたお墓よりいつも側に…」と、自宅で手元供養をしているのでは…。でも、その後は?
目次
猫の遺骨。手元供養したあとは…?
昨年、20年連れ添った愛猫を亡くした当サイトスタッフ。亡骸はペット火葬車で荼毘に伏しました。その後、火葬車のペットセレモニー会社がお寺で行った猫の合同慰霊祭に参加。このときお寺に遺骨を納骨する人もいましたが、私は手元供養を選びました。その理由は、お寺が少し離れた場所だったことや、納骨となると結構な費用がにかかることでした。
いま愛猫の遺骨はこのように↓写真とともに自宅にあります。
私には「猫といっしょのお墓に入れたらいいなぁ」という漠然とした思いがありました。しかし実際は、自分のお墓のことなんて考えたこともなく…。そもそも自分にお墓がいるのか?というところから考えなくてはいけないのですが…。
ネコリパ不動産発起人がペット霊園事業に参画
そんなある日、以前ペットホームウェブ(モフマガ姉妹サイト)でお世話になったネコリパ不動産の葛西さんに連絡を取ると、ペット霊園「那須の丘」の事業に参画されたとのこと。
那須の丘は自然葬・樹木葬のペット霊園で、飼い主とペットが一緒に入れる区画もあるのだとか。なんというタイミング!早速、話をお聞きしました。
その前に葛西さんについてみなさんにご説明を。
葛西さんが手がけたネコリパ不動産とは、”猫可”専門不動産仲介サイト。仲介手数料の一部を提携するネコリパブリック(自走式保護猫カフェ)に還元するという「+猫助け」が事業の特徴となっています。2019年12月、ネコリパブリックとともにねこ浴場(カフェ)とねこ旅籠(宿)を開業。葛西さんは企画から運営にも携わっています。
命をつなげるビジネスの難しさ
——まずは、これまでと違う分野となるペット霊園への参画に至ったいきさつを教えてください。
「ねこ浴場・ねこ旅籠の運営を通じてビジネスを継続していく難しさを感じました。ねこ浴場・ねこ旅籠の目的のひとつは、猫がいる場所を作ってご飯を食べさせ、譲渡につなげること。どうしても、猫の医療費やフード代などの普通の宿泊施設だったらかからない経費がかかります」
「それでも猫たちの居場所を確保することが最優先でしたので、2019年の年末年始に猫浴場・猫旅籠を開業。そこに2020年コロナが来ました。生きている子たちの居場所とご飯を確保するためにいっぱいいっぱいな状況となりました。その時、生きている子たちの生活費のことを考えなくてもいいビジネスルートでの、猫たちへの送金メニュー作りが必要だと痛感しました。
そんな折。今生きている子たちを支えるための資源の1つが、すでに亡くなっている子たちにあるのでは、と閃きました。命には命、なのではと」
——やはりコロナの影響を受けたのですね。
「はい。そんな事情があってペット霊園事業に魅力を感じました。コロナで自分自身の"死"の後について思いを巡らせたことも理由のひとつです。毎年、膨大な数のペットが亡くなっています。その子たちがその後、大地に還れる場所を作ることで、文字通り"命の循環"を作りたいと思いました」
飼い主がしてあげられる最大限の敬意とは?
——なるほど。今回のクラウドファンディングによると、と同時に葛西さんが気になったのがご自宅にある猫の遺骨だったと。
「はい。亡くなったあと火葬してリビングに置いていました。いわゆる手元供養ですね。つい数年そのままにしてきましたが、これでいいのだろうか…?と。考えていたら"物理的に自然に還してあげる"ことが飼い主がしてあげられる最大限の敬意ではないか…と思いました」
——私もまだ手元供養しています。一緒のお墓に入りたいと思いましたが、まだ自分のお墓がどうなるか分からないし、実家の庭に埋めるとしても両親亡き後はどうなるか…。
「ですよね。私のようにマンション住まいの方はお庭がないですし、戸建てにお住まいでも30、40年も経てば売買の対象になります。ペットの遺骨をどうするかは、結局、飼い主のエゴでしかありません。それにしても自分が納得いく方法を選びたい。私にとってそれは物理的に還してあげることだと思いました」
自然に還れる"ガーデン散骨"の実現へ
——そして、葛西さんの納得のいく方法が"ガーデン散骨"になるのですね?
「はい。お庭なら虫も鳥も来ます。種や実りに生き物が集まり、命の出入りが発生するので、ファクトとして自然に還ることができます。イメージは絵本作家ターシャ・テューダーさんのお庭。すごく作り込んでいるわけではなく、雑草も風景の一部としてあるような景色です」
——散骨でしたら、人工的な庭より自然な庭のほうがいいですね。
「自然葬とか散骨といっても、じつはきちんと墓石があり石の箱の中に骨壷に入った遺骨を収め、そこに木を植えているだけ…という樹木葬が結構あります。この狭い日本で近隣環境に配慮すると、なかなか、大地に撒いて本当に土に還る樹木葬ができる場所は多くありません」
「その点那須の丘ではもう40年前から散骨しています。それが私にとってすごく魅力的でした。那須の丘のガーデン散骨は本当に自然に還れるものにできる、ということが」
クラウドファンディングで資金を調達
——それが今回のクラウドファンディングというわけですね。
「はい。空き区画500㎡ほどの場所に”散骨ガーデン”を作ります。その他にも園内の植樹や事務所整備など、今後の事業に必要な資金を調達するためにクラウドファンディングを立ち上げました。散骨ガーデンは2023年のお盆頃までに完成させる予定です」
▼Good Morning▼
栃木県那須塩原に保護動物との出会いと最期に寄り添うペット霊園をつくりたい!
——改めてお聞きします。那須の丘にはどんなペットでも入れるのですか?
「はい。ペットでしたらどんな動物でも。大きさの問題で火葬ができない大型動物、例えばお馬さんでさえも、栃木県の許可を得て土葬で埋葬できるほどです。後述しますがペットだけでなく、人間も一緒にお入りいだだける区画もございます」
「墓石の設置可能なエリアもございます。樹木葬の霊園なのでデザインは限定されます。私たちが長いこと行ってきた”墓石の下に骨を納める”という文化からすぐ割り切れる方ばかりではないとも思います。小さな墓石を建てたり、小さな墓碑を作ったり、木を植えたりと、みなさんお好きにご自身とご家族のお墓をプロデュースされています」
——飼い主がペットと一緒に入れるのはこの区画ですか?
「はい。まずはペットが入ってその後に人の遺骨を追加する”追骨”という入り方ができます。その反対も可能です」
提携する3つの動物保護団体
——那須の丘では、今後どのように保護猫などへの支援をするのでしょうか?
「那須の丘は、ネコリパブリック、あひるネットワーク、西那須野いぬねこ里親会の3団体と提携しています。ご利用料金の10%をいずれかの団体に寄付することができます」
——事業が安定すれば、保護動物のための資金も安定することになるわけですね。
「はい。それができたら動物保護の担い手を育てることにも挑戦したい。多くの保護活動家さんがボランティアでやっていらっしゃいます。彼らにちゃんとお給料を払ってお仕事をしていただけたら、今よりもっと良くなるのではないでしょうか」
周辺の環境と問題
——私もその通りだと思います。ところで、那須で起こっている太陽光パネルの問題をSNSで観ました。那須の丘も囲まれているそうですね。
「霊園周辺の木が伐採され、太陽光パネルになってしまいました。ネガティブなイメージを持たれるかと思いますが、見通しが良く陽あたりがいいというメリットもあります。木に囲まれた森だと、いのししとか鹿に遭遇する危険があります。那須の丘は安心してお参りできます。
また、ガーデンデザイナーと日差しに強い植物を園内に植えようと検討しています。個人的にバラを育てるのが好きなので、バラ園にしたいですね」
——なるほど。
「もちろん問題もあります。周囲で土の入れ替えがあったため敷地内の川の水が赤く濁ってしまって。その整備も今後の課題です」
ここは聖域。私たちが守っていきたい
——ロケーションとしてはどんなところでしょうか?
「那須ICから車で30分、市街地からも近いです。電波が通じているのでオンラインで散骨できます。遠方の方、動けない方にいいのでは?と思っています」
——変化が著しい那須ですが、この先、那須の丘には影響あるのでしょうか?
「地元の不動産屋さんが"あそこは聖域だ"とおっしゃっていて。周りがどんなに変わってもここだけは変わらないんだ、と不動産屋さんが思っているのですね」
——地元の方がそう思われている、と。
「聖域という言葉が私にはしっくりきました。ここだけ切り取られて別世界があるような。那須の丘オーナーさんもここをずっと守っていきたいとおっしゃっていて、その気持ちを強く感じる場所です」
「やさしく忘れていく」ということ
「オーナーさんはこんなこともコメントされています」
那須の丘を訪れた方は深く悲しまれています。その後1年2年とお参りに来られ、そして段々と足が遠のかれます。でもそれはネガティブなことではないと思います。散骨されたペットたちのその後は、私たちが見守るという約束があるからみなさん安心してやさしく忘れていくということなのです。
——多くの飼い主さんがホッとされるコメントですね。私も愛猫の遺骨をどうするのか、じっくり考えようと思います。そして那須の丘の事業、微力ながら応援させていただきます。本日はありがとうございました!
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