犬猫の殺処分ゼロのために私たちができることは?【アニマル・ウェルフェアサミット2017レポート】

アニマル・ウェルフェアサミット2017

ちょっとご報告が遅くなってしまいましたが、8/27(日)・28(月)東京大学構内で開催された「アニマル・ウェルフェアサミット2017」をレポート。モフマガbyペットホームウェブは28日「日本が目指すこれからのアニマル・ウェルフェア」に参加してきました。ペットを愛する多くの人が関心を持つ犬猫の殺処分ゼロ。イベントを通じて私たちができることを探ってみます。

ペットの殺処分ゼロと、絶滅危惧動物保護へのサポート活動

「アニマル・ウェルフェアサミット」はフリーアナウンサーの滝川クリステルさんが立ち上げた一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルが主催するイベント。同財団は犬猫殺処分ゼロへのサポート活動(プロジェクトゼロ)と、絶滅の危機に瀕した動物を救うサート活動(プロジェクトレッド)を行っています。

メイン会場となっている一条ホールで受付を済ませて中へ進むと、以上の活動に関するさまざまな展示が目に入ってきました。以下にご紹介します。

アニマル・ウェルフェアサミット2017 殺処分ゼロ

全国の動物保護団体に活動内容や運営体制をアンケートし、まとめたもの。

アニマル・ウェルフェアサミット2017

全国の動物保護団体に活動内容や運営体制をアンケートし、まとめたもの。

 「殺処分問題に取り組む行政」佐賀県、豊田市、神石高原町の取組と実績

スタッフは10:00からの「殺処分問題に取り組む行政」を受講しました。このプログラムは、犬猫の殺処分を大幅に減らすことに成功した佐賀県、豊田市、神石高原町の担当者が登壇するもの。県、市、町、各行政の取組みの詳細を以下にまとめてみました。

佐賀県 (愛知県)豊田市 (広島県)神石高原町
愛護センター H27年に譲渡専用施設「いっしょけんね」オープン H27年に多くの人が訪れる公園内に開所(休憩所を改修) なし。ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)に引き渡し
ふるさと納税 H27年より「犬猫譲渡事業の支援」追加  PWJ補助金に95%支出、動物愛護事業に残り5%を活用
連携する保護団体  -  PWJ(2012年より)
殺処分数や譲渡数の成果 猫譲渡率11%→25%、犬譲渡率:28%→78%( 「いっしょけんね」設置前と設置後を比較) 犬の殺処分:51頭(H26年)→15頭(H28年)、猫の殺処分:307頭(H26年)→202頭(H28年)  犬の譲渡率:18%(H26 )→28%(H28年)
課題 獣医療・ケアの充実、飼い主明示、不妊去勢、室内飼育、ミルクボランティア 預かり・ミルクボランティア)の育成、猫ワクチンの確保  譲渡事業PR、他の自治体との連携、里親ボランティア登録・育成

佐賀県と豊田市は、これまでの動物愛護センターを「殺処分施設」ではなく「譲渡施設」へと変えることで、犬猫の殺処分を減らし譲渡数を上げています。神石高原町は地元の動物保護団体ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)との連携が大きなきっかけに。また、「ふるさと納税」を利用して事業活動費を集めている佐賀県と神石高原町は、「大きな成果を上げていて全国の方の善意を実感している」とおっしゃっていました。

アニマル・ウェルフェアサミット2017 殺処分ゼロ

愛護センターの犬たちとスタッフを撮影した犬丸美絵さんの写真

しかしまだまだ課題も。佐賀県と豊田市では、「保護数が圧倒的に多く世話に手がかかる生まれたばかりの子猫にはボランティアの手がもっと必要。そのため、ミルクボランティアや預かりボランティアの育成が課題」とのこと。そして、譲渡した犬猫への避妊去勢手術も「飼い主への追跡調査などで徹底させたい」とおっしゃっていました。
避妊去勢手術については、来場者からPWJと連携する神石高原町へ質問がありました。というのも、PWJでは「犬の避妊去勢手術は里親に委ねる」という方針をとっているため。会場にいらっしゃる殺処分ゼロ、保護犬、保護猫活動の現場にいる方、興味がある方からすると、犬猫の避妊去勢手術は必須といえます。質問された方は、「ふるさと納税で神石高原町・PWJをサポートしていたのに、このことを後から知って驚いた。サポートに疑問を抱いている」とのこと。神石高原町のスタッフは「貴重な意見として受け留め、今後PWJと協議していく」と対応しました。

野生動物追い払い犬「里守り犬」とは?

2つ目に受けたセミナーは「里守り犬(さともりいぬ)とは?人と野生動物の住みわけに愛犬のエネルギーを生かそう」。軽井沢ドッグベイビア主宰の山下國廣(獣医師・ドッグトレーニングインスタラクター)さんが登壇しました。
里守り犬とは、今問題になっている農地の野生動物被害を減らす一つの方法として、犬に野生動物を追い払ってもらうというもの。山下さんは元気で狩猟本能の高い犬の能力は、野生動物の接点となってしまっている人里でこそ生かせる、といいます。お話によると、里守り犬の育成には犬の素質が重要になりますがコストは低くすむそう。大切なのは、「地域全体での継続的な取り組みが必要」とのことでした。

アニマルウェルフェアサミット2017 里守り犬

里守り犬イメージ写真

里守り犬はすでに、山梨県北杜市、南アルプス市、長野県佐久穂町などで実施されています。また、山下さんは、長野県軽井沢町では、犬と森を散歩することで人と野生動物の住みわけの一助にするフォレストトレンジャードッグ活動なども紹介しました。
次に登壇したのは、モンキードッグに取り組んでいる三重県名張市の宇陀・名張地域鳥獣害防止広域対策協議会の廣田晶一さんと井上賢彦さん。お話によると、名張市と宇陀市の境界に推定45頭と推定40頭のサルの群れがいるそうですが、平成21年からモンキードッグの育成・導入をはじめ、サルが近づかなくなった集落もあるとのこと。これまで41頭の犬をモンキードッグに認定し、現在、19頭が活躍中なのだとか。
両市はモンキードッグの募集などを広報誌、イベントなどで周知し、また、モンキードッグ倶楽部をつくり訓練水準の維持や飼い主同士の交流、情報交換、地域住民への周知活動を行っています。
野生動物をむやみに殺すことなく、本来の住処に追い払うという「里守り犬」。犬の余りある能力を発揮できる取組みだと思いました。もっと広まるといいですよね。

幅広い年齢層が動物と人が幸せに暮らすことに関心

サミット2日間のクロージングでは、まず、会場内に展示されていた「動物と人が幸せに暮らすための自由研究」の授賞式が行われました。プレゼンターは滝川クリステルさん。見事受賞となったのは小さな子供からシニアまでのみなさんで、幅広い年齢層がアニマルウェルフェアに強い関心を抱き、行動していることが分かりました。

殺処分ゼロ

最後に、クリステル・ヴィ・アンサンブルの滝川クリステルさん、大西純子さん、高橋一聡さんがこの2日間を総括。滝川クリステルさんと対談した小池百合子東京都知事は、「犬の殺処分ゼロは2016年に達成。犬猫殺処分ゼロは2020年より早く達成できるのでは」とおっしゃっていたそうです。また、ペットショップ「コジマ」の小島章義さん(コジマ代表取締役会長)が登壇されたことが画期的だったこと、糸井重里さんのトークライブについても触れていました。
日本では犬猫の殺処分ゼロを達成した県もあれば、まだ達成していない県もあります。東京都はあと少し。しかし、犬猫の殺処分ゼロの達成だけでは、無責任な飼い主を減らすことや保護活動をしている方への負担が減るわけではありません。
アニマルウェルフェアがもっと多くの人に周知され、人間と動物が笑顔になれる日を願って。「アニマル・ウェルフェアサミット」は殺処分ゼロへの重要な役割を担うと同時に、さらなるみなさんの力を必要としています。

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