猫の吸着剤。何を吸着してどんな効果があるの?

猫の吸着剤

猫の腎臓病で使われる“吸着剤”とはどんなものでしょうか?愛猫の腎臓病でさまざまな吸着剤を使ってみた、当サイトスタッフがご案内します!

猫の吸着剤で腎臓病の症状を緩和、進行を遅らせる

猫の慢性腎臓病は、血液をろ過、老廃物を排出する「ネフロン」が少しずつ線維化して腎臓が徐々に機能しなくなる病気。有害な老廃物がおしっこで排出されず、血液中に留まります。これにより、だるさ、食欲不振、嘔吐、多飲多尿、脱水、便秘、下痢、体重減少など、猫にとってつらい症状が出てきます。

これら症状の元となる老廃物を吸着するのが「吸着剤」です。猫に経口投与して消化の過程で吸着、便で体外へ排出します。

猫の腎臓病では、ダメージのないネフロンが機能しなくなったネフロンのぶんまで働くため、さらに線維化が進むといわれています。吸着剤の投与は元気なネフロンの働きをサポートし、腎臓病の進行を遅らせることにつながります。

猫の吸着剤 腎臓病の猫
2022年、腎臓病で亡くなった当サイトスタッフの愛猫。2020年の写真。

猫の吸着剤は何を吸着する?

吸着剤が吸着する成分は、腎臓がろ過できずに血液中や体内に溜まってしまった老廃物などです。血液検査では、BUN(尿素窒素)、リン(P)と記されています。

  • 尿素窒素(BUN)……たんぱく質が分解されてできる有害な老廃物。基準範囲値は17.6~32.8mg/dl。慢性腎臓病の猫のBUNが60mg/dl以上になると、だるさ、嘔吐、元気消失、食欲不振など症状が現れるので、60mg/dl以下を保つことが非常に重要。
  • リン(P)… たんぱく質の多い食品に含まれる成分。 基準範囲値は2〜6.5mg/dl。骨や歯を丈夫で硬く作るための栄養素でカルシウムなどのミネラルと結合する性質。ネフロンの機能が低下し体内のリン濃度が上昇すると、血中カルシウムを増やす指令ホルモンが放出。このときカルシウムが足りないと骨まで溶かしてしまい、さらに臓器の石灰化を進めるので、リンの摂取を制限し排出を促す必要がある。
猫の吸着剤

尿素窒素(BUN)を減らす吸着剤

BUNを減らす吸着剤(サプリメント)には、主成分が活性炭のものと乳酸菌のものがあります。活性炭タイプはBUNを吸着して便から排出します。乳酸菌タイプはBUNを利用(代謝)して増殖するので、BUNを低減します。

どちらのほうが効果的というのはありません。飼い主さんが毎日、既定の量を猫に与えられるかどうかが効果につながります。サプリの形状も、錠剤、粉剤、カプセルといろいろあります。ひと通り試してみて猫に与えやすいものを選んでください。

例えば、吸着剤の与え方が「フードに混ぜて与える」と説明にあっても、それだと食べない猫がいます。投薬補助剤やオブラート、おやつを使って、工夫してみましょう。

参考:猫の薬のあげ方。フードに混ぜるときのコツをお役立ちアイテム

BUNの吸着剤は、猫の腎臓病ステージ1からステージ4の末期まで投与が続きます。「猫と飼い主さんが無理なく続けられること」が何よりも大切です。

ネフガード/共立製薬

多孔性構造体で吸着力が強いヘルスカーボン(植物性活性炭)が主成分。分子量100〜90,000位までの物質を吸着。~5キロの猫への投与は1日2~3粒。

【使ってみた!】
ウエットフードにそのまま混ぜると溶け出して猫が食べなかった。その後、1粒が大きかったので半分に割り、メディボールやチーズに包んでフードやちゅ~るに混ぜて猫に投与。1日2~3粒を与えられない日も多々あったが、十分に与えられた日が続くと、嘔吐の回数減、旺盛な食欲の復活などから効果を実感。

カリナール2/エランコ

乳酸菌とその増殖を助けるオリゴ糖などが主成分。乳酸菌が消化管内のBUNを利用(代謝)して増殖することで、BUNを低減させます。付属のスプーン1杯(0.5g)を1日の食事回数に分けて投与。ドライフードの場合は、フードを少量の水で湿らせて上から降りかけます。

【使ってみた!】
説明どおりウエットフードに混ぜても猫が食べない。舐めてみると乳酸菌らしい酸っぱさが。そこで与え方を変更し少量の水を与えてお団子にしてメディボールやチーズで包み、フードやちゅ~るに混ぜて投与。嘔吐の回数減、旺盛な食欲の復活などから効果を実感。

アゾディル/日本全薬工業

BUNなどの窒素化合物を栄養源として利用できる選ぶ抜かれた3種の善玉菌が主成分。1カプセルに150億個以上の「生きた菌」が含まれているので、冷蔵庫での保管が必須。購入する際もクール便での配達になる。胃で溶けず大腸で溶ける腸溶性カプセル入り。食事の1時間前、または空腹時を目安に、朝1カプセル、夜1カプセル与えます。

参考:猫の腎臓病ステージ2から3に。初めての皮下輸液、新たにアゾディルを追加

【使ってみた!】
人間用と同じカプセルの大きさにびっくり。とても猫に投与できないとネットで検索すると、カプセルを濡らして小さく変形できるとあり、それをちゅ~るとあげた。それでも猫が嫌がり1日1カプセルにしたが、食欲のキープや嘔吐回数の減少から効き目を感じた。お値段が高いなりに効果は高い。が、投与が難しい。

リン(P)を減らす吸着剤

猫の腎臓病が進むと、ミネラルの一種であるリンが排出できなくなり、血液検査の数値が上がり出します。リンは本来、骨や歯を固く丈夫にする成分で有毒ではありません。しかしカルシウムと結合する性質ゆえ、リンの量に合うカルシウムを要求します。そのため血液中のカルシウムが少ないと、骨を溶かしたり、臓器の石灰化が進めてカルシウムを増やそうとします。リン吸着剤の投与は、血液検査でリンの数値が上がり始めたら始めます。

プロネフラ/ビルバック

付属のシリンジで与える液体の吸着剤。以下4つの成分がリンと老廃物(BUNなど)ほか多方面に作用します。チキン+魚のフレーバーで、「97%の犬猫が食べた」と高い嗜好性を打ち出したサプリメントです。
・炭酸カルシウム:食物由来、リンを吸着
・炭酸マグネシウム:食物由来、リンを吸着
・キトサン:健康な腎臓のため体内の老廃物に配慮
・オリゴペプチド:健康な血管機能に配慮

参考:猫の腎臓病ステージ3。週1回の皮下輸液とプロネフラで数値が下がった

【使ってみた!】
フードに混ぜて与える吸着剤がどれも食べなくなる愛猫。もしかしてこれなら自ら食べてくれるのでは?と期待を込めて購入したが、結果はNG。シリンジ強制投与となった。1回の量が測りやすいのが◎。血液検査のリン数値下がり、効果を実感。

PE キドキュア/QIX(キックス)

リンと尿素窒素(BUN)双方に作用する吸着剤。以下3つの吸着成分で、消化管内のリン・窒素代謝物を吸着・排出し、腎臓の健康維持をサポートします。2.5~5kgの猫には、1g(付属スプーン2杯)を1日の食事の回数に合わせて投与。
・炭酸カルシウム : 消化管内でリンと結合してリン酸カルシウムとなり、便と一緒に排泄。
・天然ゼオライト : 腸管内でリン及び尿素、アンモニア、尿酸などの窒素性老廃物を選択的に吸着除去。
・キトサン : 腸管内で尿素、アンモニア、尿酸などの窒素性老廃物を選択的に吸着除去。

【使ってみた!】
ステージ4で使用。少量の水を加えて練り、お団子にしてからメディボールで包んでフードへ混ぜるかちゅ~ると一緒に。やわらかいので猫が食べやすそうだった。お団子は規定量を軽くクリアできるのがメリット。そのせいかステージ4でも食欲がキープできていた。

猫の吸着剤は口コミを参考に

振り返ってみると、猫が腎臓病になってからは、いい吸着剤を探しては試し…という繰り返しでした。以上の吸着剤以外にも当サイトスタッフが試してみたものはいくつかあります。

探すとき参考にしたのは、ショッピングサイト(私の場合は楽天)のみなさんの口コミです。「フードに入れて食べてくれた。その後効果があった!」というものから、「うちのコは食べないからリピなし」「食べないからこうして与えた」というものまで、すべてが参考になりました。

猫の吸着剤の口コミは、ほかのものと比べものにならないくらい充実しています。飼い主のみなさんの気持ちも垣間見え同じ仲間として心強く感じました。ぜひみなさんも、時間をかけてチェックしてみてください!

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