猫の腎臓病、週1回の皮下輸液で食欲が復活!飼い主に心のゆとりも
腎臓病で週1回の皮下輸液を行うようになった当サイトスタッフの猫。そこで今回は、猫の腎臓病で行う皮下輸液についてお伝えします。
目次
猫の腎臓病。週1回の皮下輸液を開始
皮下輸液とは文字通り皮下にする輸液のこと。いわゆる点滴と違って血管に針を刺すものではありません。猫に行う皮下輸液は頸の後ろの皮下に針を刺し、輸液を注入します(上の写真)。
この皮下輸液、猫の飼い主さんには「腎臓病がかなり進行してから行う」という認識ではないでしょうか。当スタッフもそうでした。
昨年夏、BUN71.2、クレアチニン4.56に上がった猫に初めて臨時的に皮下輸液を行いました。このとき獣医師に「今後は週1回くらい」と提案されましたが、当スタッフは「負担が大きいので吸着剤とサプリで対応したい」と考えました。腎臓病猫の飼い主さんに評判のいいアゾディル投与で食欲をキープできたので結果に期待しましたが、血液検査では現状維持。そこで週1回の皮下輸液を開始したのです。
皮下輸液は猫にとって大きなストレス?
週1回、動物病院に通って針を刺す輸液となると、猫へのストレスが気になりました。うちの猫は以前の動物病院で診察台に乗せただけで必ず失禁・脱糞という状態だったので(乳腺腫瘍の手術と入院後から)、引越しを機に病院を変えた経緯があります。
今の動物病院では失禁せずに通えています。なんとかこれをキープしたい…。2、3回皮下輸液をやってみた結果、幸いにも猫の様子は変わりませんでした。ホッ。
週1ペースにしても大丈夫でした。輸液の約10分間、猫は大人しくしています。終わったとき1回シャーしますが、失禁するほど怯えたり診察台から逃げ出すことはありません。輸液は採血時のように手脚を抑え込まないし、猫が見えない首の後ろに針を刺すからでしょうか。いずれにしろ、猫にとって週1回の皮下輸液は許容範囲だったようです。
始めたら猫の食欲が復活!飼い主に心のゆとりも
いざ週1で皮下輸液を始めてみると、以前のように猫の食欲が戻りました。ガツガツとフードへの食いつきがよくなり、朝は以前のように飼い主を起こしてご飯を催促するほど。減っていた体重も3キロから3.3キロまで戻りました!
猫がご飯をモリモリ食べ活発さが戻ると、飼い主に心のゆとりができました。
というのも、以前はただでさえ進んで食べてくれない療法食、シニア食、減たんぱくのフードに吸着剤やサプリを混ぜていたので、食べたり食べなかったりと大変でした。帰宅後、残っているフードを見てガックリしたことも多々。あれこれフードを取り寄せ、試していました。
このように猫の食欲のムラから頼りの吸着剤が充分に与えられないことが、飼い主にとって焦りと不安になっていました。が、皮下輸液で食欲が戻るとフードも吸着剤も勢いでペロリと食べてくれます。こんなことなら早く始めればよかった…!
血液検査の結果も改善
皮下輸液により、血液検査の結果も改善しました。11月末再びBUNが上がってしまいましたが、クレアチニンは低下。2020年初の血液検査ではBUNが下がりました(クレアチンとリンは上昇)。いずれも週1皮下輸液の開始前、9月の数値よりよくなりました。
9/6 | 10/31 | 11/29 | 1/12 | |
BUN | 73.2 | 68.7 | 74.4 | 65.0 |
クレアチニン | 4.53 | 3.84 | 2.73 | 3.96 |
リン | 5.5 | 3.4 | 4.0 | 4.5 |
吸着剤・サプリメントの使用状況は、9月10月はプロネフラがメイン、11月以降はレンジアレンをメインにネフガードとアゾディルで補助しています。BUN、クレアチニンへの注意とともに、10月にぐっと下がったリンが上昇してきたので、リン吸着にも気を付けようと思います。
脱水状態の気持ち悪さからフードを選り好む
以上のように猫の腎臓病で皮下輸液を始めて、当スタッフが気づいたことがあります。猫がフードをこれまで以上に選り好んだり残したりしていたのは、「療法食がおいしくない」「変なものが入っていて嫌」というより「脱水による気持ち悪さが大きい」ということです。
「脱水状態を皮下輸液で緩和すると、気持ち悪さがなくなり食欲が出る」。そうとは知らず、いろいろな療法食やフード、吸着剤を試してはガッカリ…を繰り返していました。もしかしたら腎臓病を悪化させてしまったのではないか…?そこで猫の皮下輸液について調べてみました。
皮下輸液で脱水状態を防ぐ=腎臓病の悪化を防ぐ
資料を探してみると、学術論文をアーカイブしているJ-STAGEに「慢性腎臓疾患における皮下輸液」(2013年 長江秀之 ナガエ動物病院院長,織間博光 日本獣医生命科学大学名誉教授 特別寄稿)が掲載。ここから、皮下輸液の目的などの記述がありましたので書き出します。
皮下輸液の目的と開始時期
・犬猫の慢性腎臓疾患では容易に脱水状態に陥る。
・脱水状態は腎臓のGFR(老廃物のろ過量)を減少させ、慢性腎臓疾患を悪化させる。
・慢性腎臓疾患は脱水状態の予防で悪化を防ぐことができる。
・早期から皮下輸液開始は、費用負担、犬猫への負担、局所の化膿、硬結、疼痛、石灰化、犬猫と家族の絆の崩壊、高血圧の助長などが懸念され、利点が少ない。
・慢性腎臓疾患における皮下輸液の目的は「脱水を継続させないこと」
・開始時期は「脱水状態・水和状態」で判断。「自力で口から水分を摂取しても、自力では水和状態や電解質・酸塩基平衡を維持できなくなった段階」
・皮下輸液は慢性腎臓疾患を治す治療ではない。
脱水状態のサインに注意しよう
以上からやはり、脱水状態の予防=皮下輸液はもう少し早くから開始したほうがよかった、と後悔。今後は獣医師と相談のうえ皮下輸液の間隔と量を調節して続けていくつもりです。
みなさんも猫の腎臓病でフードをこれまで以上に選り好みしたり、残すことが多くなったら、「脱水状態」を考えてみてください。
また、気持ち悪さのバロメーターとなる「嘔吐」にも注意。愛猫も度々嘔吐していましたが、飼い主は毛玉吐きの嘔吐と思っていましたが、脱水の気持ち悪さからした嘔吐もあったのでは…と。飼い主としてもっと猫の腎臓病について知っておくべきでした。
猫の慢性腎臓病における皮下輸液、その他のポイント
「慢性腎臓疾患における皮下輸液」には、その他に輸液剤についての詳しい記述があり、以下をまとめています。
①自発的な水分摂取では脱水してしまうときから開始する。
②犬猫の血圧はNa非感受性なのでNa投与量は重大な問題ではない。
③糖が入っていない輸液剤が低刺激性である。
④イオンバランスが正常であるならば乳酸リンゲルが好ましい。
⑤脱水させない量と間隔を見極める
⑥高血圧は更なる悪影響を及ぼすので、頻回の血圧測定は必須。
⑦腎臓病を治す治療ではないことを家族に伝える。
⑧定期健診は必須。
皮下輸液の費用は?
最後に気になる費用について。私が通っている動物病院では1回の診察と輸液で3,500円くらいです。1か月当たり約14,000円ですが、ペット保険から半分戻ってくるので1か月当たり約7,000円です(血液検査/尿検査の費用は別)。
猫の腎臓病には、輸液以外にも薬(ラプロス)、血液検査、尿検査、膀胱炎の抗生剤などに費用がかかります。猫の飼い主さんは腎臓病に備えて、ペット保険に加入することをおすすめします。
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